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一年で一番寒い2月のベルリンを華やかにしてくれるベルリン国際映画祭は現地ではベルリナーレ (Berlinale)の名で親しまれています。

そのベルリナーレで日本映画「彼らが本気で編むときは、」がテディー審査員特別賞を受賞しました。 テディー審査員特別賞とは映画祭で上映されたLGBTをテーマにした映画の中から選ばれます。テディー賞で日本映画が選ばれるたのは今回が初めてだということです。

※この先ネタバレありますのでご注意ください。


映画「彼らが本気で編むときは、」とは

生田斗真さんがトランスジェンダーの女性、リンコを演じ、その恋人のマキオを桐谷健太さんが演じています。リンコの母を田中美佐子さん、マキオの姉で育児放棄をする母をミムラさんが演じています。
設定はアメリカの映画、「Shelter」(2007)に似ていますが、主人公がトランスジェンダーであること、そしてストーリー展開も日本独特のものになっています。


監督について

今までに多くの映画を世に出してきた荻上直子監督ですが、今回の映画は今までの映画と少し違うように感じました。
荻上監督といえば、「かもめ食堂」(2006年)、「めがね」 (2007年)、「トイレット」(2010年)、「レンタネコ」(2012年)といった映画が有名で、これらの映画は監督のファンである女性層には人気が高いですが、それ以外の方からは敬遠されることが多かったように思います。ところが今回の映画では現代の家族のあり方やトランスジェンダーというマイノリティーとして生きることを世に問いかけている、そんな映画出した。


こみ上げる怒り

主人公のリンコはトランスジェンダーとして暮らしています。体は手術で女性にはなったものの、手の大きさや体の大きさを変えることはできません。彼女の心の豊かさや優しさを知っている家族や恋人、同僚は彼女を受け入れてくれますが、生活の中で出会うのは理解を示してくれる人だけではありません。彼女を「普通ではない」とラベルを貼り、自分の子供に彼女と関わることを禁止する母親、戸籍がまだ男性であることから保険証の性別が男性であることを理由に女性用の病室への入院を頑なに拒む看護師。 そんな時に彼女本人はもちろん、彼女の家族や恋人が覚える世の中への怒り、これがとても良く表現されています。僕自身もゲイとして生きる一人です。この「怒り」についてとても共感できたこと、そして映画の中でとてもよく表現されていたことがとても嬉しく感じました。 そして、そんな時に主人公が「怒り」の対処法としてやるのが編み物です。


編み物のについて

実際、僕も編み物をします。なぜか昔から編み物に惹かれていました。本格的に始めたのはベルリンに住み始めてからでした。日本に住んでいた頃は仕事が忙しかったというのもありますが、やはり男性が編み物をするということにまだまだ偏見があり、自分の中でもその偏見があったのだと思います。 そしてベルリンに越してきてから人に教えてもらいながら編み物をするようになりました。
編み物をしているとなぜか心が落ち着くのです。同じことを長い時間ただ繰り返しているだけなのですが、その間何も考えずにただ編んでいくその作業が心を無心にし、瞑想のような効果を与え、心を静かに穏やかにしてくれるのです。
この映画の中でも主人公のリンコが「怒り」をしずめる方法として編み物をしています。

2017年2月25日公開、「彼らが本気で編むときは、」興味のある方はぜひ観てください。



「彼らが本気で編むときは、」公式サイト